「I-ZA-NA-I」for Mandolin Orchestra

提供:帰山栄治作品解説集
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編成 演奏時間
Mn1 Mn2 Ma Mc Ml Gt Cb シンセサイザー 19分
演奏日時 備考 演奏団体
2000.3.19 初演 名大OB演奏会 - 「生きる」より第一楽章を改作
2012.2.12 アンサンブル・クリオ

楽譜によると2000年1月8日完成。この「I-ZA-NA-I」は、1987年7月の「帰山栄治作曲の世界その2」で初演されたマンドリンオーケストラの為の四章「生きる」の第1章が改作され、単一楽章の作品として生まれ変わったものである。

演奏時間については、初演の1月ほど間に帰山氏に伺ったときは、帰山氏は、カットした部分があるにせよ、繰り返したりしているので、「生きる」の第1章とあまり時間は変わらないのではないかと仰っていたが、実際に演奏された時間は5分ほど短くなっている。


Lento, 4/4で始まる(四章「生きる」では最初のAdagioの箇所)。4分音符、付点2分音符、のリズムを2回繰り返し音階をユニゾンで登っていき、4度(時折3度)のハーモニーで少しずつ降ると、ギターソロが始まる。次に同様な音形の後にマンドリンのソロが続く。この最初の部分に関しては改作前の作品である「四章『生きる』」とおおよそ同じである。全てにわたり音が選び直され、声部も下行において「生きる」では2声だったのが、「I-ZA-NA-I」では、部分的に3声とし和声が充実されている等、ある程度の変更が見られる。ギター、マンドリンのソロが再度現れたのち、低弦のユニゾンと、マンドリン、マンドラの下行を主とするメロディーが重なりあい、高潮を迎える。

その後、Andante(練習番号6、「生きる」では7)、4/4で、ギターが4度を重ねた和音を4分音符で刻み、マンドラとチェロが一拍目に6連符で動き、他の楽器が拍頭を落とした3連符の場面へ移る。生きるではここは縦割りの叩きつける様な音の場面であったが、「I-ZA-NA-I」ではギターが4 分音符で刻んでいる為、ドライな感じは薄れたが縦横織り込んだテクスチュアとなった。また、「生きる」では4/4 + 2/4や4/4 + 3/4であったが、単純に4/4へ変更されている。途中から12/8+6/8(「生きる」では4/4 + 2/4)へ変わり、次第に動きがオーケストラ全体に行き渡るように広がり(練習番号7以降)、テンポを増し拍子を3/4としてマンドリンのソロに彩られた美しくかつ力強いメロディーへ移る(練習番号10、Allegro moderato)。ここも「生きる」では拍子は4/4 + 3/4であり、単純化され、ソロも「生きる」ではギターとマンドリンのソロであったが、マンドリンのみに変更されている。

再び、練習番号6のような場面へ移るが、今度は「生きる」とほぼ同じ形で現れ、4/4 + 2/4で、ギターは4分音符で刻んでおらず、緊張感のある場面である(練習番号17 Andante)。幅広いユニゾンとソロギターの掛け合い(練習番号18、Poco rubato)と、曲の冒頭部のメロディーが繊細な形で現れる(練習番号19、Calmo)のを経て、低弦の6連符が特徴的なAndante lento(21)へ移る。この部分の長さは「生きる」では34小節であるが、「I-ZA-NA-I」では倍の68小節に拡大され、じっくりと盛り上げていく。また、「生きる」ではこの後にPiu mosso,2/4で16分音符の分散和音を伴う新たな旋律がある(「生きる」のページの(25)及び(26)参照)が、「I-ZA-NA-I」ではこの部分はカットされ、Andante lentoが盛り上がり、沈静化したのち、ギターとマンドラ、チェロ、マンドリンによって最初の音形が奏され、ギターソロが入りそれ続いてマンドリンソロとなりオーケストラのやわらかい和音を導いて静かに終わる。

(西海)



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