ギター合奏の為の2つの"ウタ"「竹の花」

提供:帰山栄治作品解説集
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演奏時間
13分
演奏日時 備考 演奏団体
1988.12.15 初演 愛知大学名古屋校ギターアンサンブル26回定演

愛知大学名古屋校舎ギター部からの委嘱により1988年秋に完成、同年12月15日に初演された帰山氏による7作目のギター合奏曲である。

副題(2つの"ウタ")が示す通り、この曲は2部構成の形をとっており、前半、後半それぞれ独自のウタと性格を持つ。30小節程のゆっくりとした序奏の後、三連符の連続が開始され、旋律A続いて旋律Bが現れ、反復する。そのまま中間部へ入るが、前半の影響を強く残しながらも、少しずつ変化をし、後半への接続を模索する。テンポがレントにまで遅くなり、中間部が静かに終了すると、前半とまったく異なった曲想(ウタ)を持つ後半が始まる。アルペジオが途絶えることなく繰り返され、その曲想の土台を作っている。このアルペジオに旋律Cが重なり、叙情的な音楽がとうとうと流れていく。それは、最後まで壊されることなく維持されE音で終結する。 この作品の最大の特徴は、過去の作品に比べて先鋭的な現代感覚が全面的に後退し、代わって、叙情性が前面に出て、性格的にも温和になっていることである。特に、後半部分でそれは顕著である。

帰山氏によれば、この曲は理屈で書かなかった音楽だという。我々と同時代を生き、混迷といわれて久しい現代音楽界で音楽を創造する帰山氏は、今後どのような方向にその音楽のあり方を見出してゆくのだろうか。興味の尽きないところである。その1つの試みとしてこの曲をとらえることができるのではないだろうか。

(愛知大学ギター部第26回定演パンフレット紹介文を執筆者(二宮)が加筆・修正 - 2001.1.5)


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