JASRACに著作権を信託していない作曲家、編曲の権利者がある曲、出版権者が設定されている曲などです。ほんの一部の例であり、全体を網羅しているわけではありません。また、内容はJASRACのデータベースに基づくものですが、データベースは常時更新されています。実際に曲を使用される場合は、その都度確認してください。(敬称略、2000年12月現在)
- Amedeo Amadei
- 本人の著作権は消滅しているが、編曲の権利者登録あり。
中野二郎編曲 : 「北欧のスケッチ組曲」(Suite Acquerelli Nordici)、「東洋の印象第一組曲・第二組曲」(Impressione d'Oriente)、「中世の放浪学生組曲」(Suite Goliardica)など。
久保田孝編曲 : 「北欧のスケッチ」(Acquerelli Nordici)
- Vincenzo Billi
- 本人の著作権は消滅しているが、編曲の権利者登録あり。
中野二郎編曲 : 「村祭」(Fete au Village)、「エチオピア小景」(Quadretti d'Etiopia)など。
- Arrigo Cappelletti
- 著作権残存。
- Giuseppe Filippa
- 著作権残存。一部の曲について出版権者の設定あり。
- Salvatore Falbo Giangreco
- 著作権消滅。しかし、Salvatore Falboという名前の別の作曲家の著作権が残っていて、JASRACが間違えて使用料を請求することがあるので注意。
- Mario Maciocchi
- 著作権残存。
- Giuseppe Manente
- 本人の著作権は消滅しているが、編曲の権利者登録あり。
中野二郎編曲 : Antico e Moderno(昔と今)、Festa di Nozze(華燭の祭典)、Intermezzo Sinfonico(交響的間奏曲)など。
久保田孝編曲 : 「メリアの平原にて」序曲(Sulla Piana della Melia)
- Konrad Wölki
- 著作権残存。JASRACのデータベースではドイツ語の"ウムラウト"が表示できないため、英語表記の"oe"を用いて"Woelki"と登録されている。日本語読みは"ヴェルキ"。
- 大栗裕
- 一部の曲について出版権者の設定あり。
- 小林由直
- 一部の曲について演奏凍結。
- 久保田孝
- 一部の曲について出版権者の設定あり。
- 二橋潤一
- JASRAC無信託、一部の曲について出版権者の設定あり。
- 長谷川武宏
- JASRAC無信託、一部の曲について演奏凍結。
- 著作権
- 音楽、文芸、学術、美術、映画などの文化的な創作物を「著作物」と呼びます。我々が豊かな文化を築いていくためには、著作物を創作した「著作者」に権利を与えて著作物が濫用されないよう保護しなければなりません。この著作者に与えられた権利が「著作権」であり、その内容は「著作権法」に定められています。
- 著作権者
- 著作権は譲渡することができ、著作者以外の者(例えば出版者)が譲渡により著作権を所有している場合があります。実際に著作権を所有している者を「著作権者」と呼びます。
- 複製権
- 著作権に含まれる権利のひとつで、読んで字のごとく著作物を「複製」する権利ですが、「複製」の意味する内容は多岐に渡ります。著作物を楽譜、文字、図画などの形に表すこと、それを印刷すること、印刷物を電子的にコピーすることはもちろん、手で書き写したり聞き書きすることも複製になります。音楽の場合、演奏を録音したりそれをCD化すること、ディジタル化することも複製に該当します。
これらの複製行為を著作者以外の者が行うためには、著作権者の許諾が必要です。ただし、個人あるいは家庭内などの限られた範囲で使用すること(私的利用)を目的として、その使用者が複製を行うことは許されます。しかし、複製の対象は公衆に放送されたもの、使用者が所有しているものに限られ、他人から借りたものを複製することはできません。
- 演奏権
- 著作物を公衆に直接聞かせることを目的として演奏する権利で、これも著作権に含まれる内容のひとつです。演奏に当たっては著作権者の許諾を必要とします。
ただし、(1)聴衆や観衆などから一切対価を徴収せず(2)実演家に報酬を支払うことなく行われる演奏で、(3)営利を目的としない場合には、著作権者の許諾を必要としません。したがって、例えば高等学校の文化祭などで行われる無料の演奏は、この三つの条件を全て満たすので、著作権者の許諾は必要ありません。一方で、たとえ、無料で行われる演奏であっても、宣伝をするなどの営利目的があれば、著作権者の許諾が必要となります。
- 出版権
- 「出版」は複製の一形態であり、したがって著作権者のみに許される行為です。著作権者は著作物を広く頒布するために、特定の者に「複製する権利」を専有させることができます。これを「出版権の設定」と呼び、出版権の設定により複製権を与えられた者が有する権利を「出版権」と呼びます。俗に「版権」と称されているものは、概ねこの「出版権」に当たります。
- 編曲権
- 著作権法上の「翻案権」に含まれ、著作権の内容のひとつです。したがって、編曲する権利は著作権者が専有しています。著作権者以外の者が編曲を行う場合は、著作権者の許諾が必要です。
- 著作隣接権
- 音楽や演劇などの著作物の場合、著作者の創作物を広く公衆に提供するためには、演奏家、歌手、俳優、舞踊家などの「実演家」を媒介とし、さらにレコードの頒布や放送といった伝達手段を必要とします。このため、実演家、レコード製作者、放送事業者には著作物の取扱いに関する権利が与えられています。この権利を「著作隣接権」と呼びます。
著作権法は著作隣接権を保護しています。例えば実演家であれば、実演を録音、録画したり放送する権利などを有します。また、レコード製作者はレコード(CD、DVD等を含む)を複製したり送信可能化する権利を有します。ただし、これらの著作隣接権は、著作権とはまた別に存在するものです。それゆえ、例えば実演を録音する際には、実演家だけでなく、著作権者の許諾も必要となります。
- 日本音楽著作権協会 (JASRAC)
- 本文参照のこと。
- 著作権の信託
- 作曲家や音楽出版者などの著作権者が音楽著作物の著作権管理をJASRACに委ねることを「著作権の信託」と呼び、このとき著作権者とJASRACの間で交わされる契約を「信託契約」、信託契約を結んだ著作権者を「信託者」と呼びます。
信託は曲ごとに行われるのではなく、信託者の有する著作権は将来取得する分も含めてすべてJASRACが管理することになります。JASRACは著作権を信託財産として預かり、著作物の使用許諾を出すとともに使用料を徴収し、別途定められた「著作物使用料規程」に基づいて信託者に使用料を分配します。
信託契約を結ぶことにより著作者人格権などを除くすべての著作権がJASRACに移るので、著作権者が直接使用許諾を出すことはできなくなります。一方で、JASRACが著作権を管理することは使用料の確実な徴収を可能とし、合わせて著作物を広く利用しやすくすることにより文化の発展に寄与するというメリットがあります。
- 戦時加算
- 著作権の保護期間は、通常著作者の死後50年を経過するまでですが、第二次世界大戦中、日本は連合国の著作物を保護していなかったため、連合国の著作物については著作権の保護期間に戦争期間が上乗せされます。これを「戦時加算」と呼びます。戦時加算は相手国によって異なり、例えばイギリス、フランスの著作物については3794日、レバノンの場合は4413日です。
イタリアは枢軸国ですから戦時加算の対象にはなりませんが、イタリアオリジナルの作曲家の中にはフランス人やフランスに帰化した人がいますから、没年だけから保護期間を推定するのは危険です。
- 加戸守行『著作権法逐条講義』(著作権情報センター、三訂新版、2000年)
- 金井重彦=小倉秀夫編著『著作権法コンメンタール【上巻】1条~74条』(東京布井出版、2000年)
- 田村善之『著作権法概説』(有斐閣、1998年)
- 田村善之『知的財産法』(有斐閣、2000年)
- 著作権法令研究会編著『著作権法ハンドブック』(著作権情報センター、改訂新版、2000年)
- 半田正夫『著作権法概説』(一粒社、第9版、1999年)
- 青山学院大学法学部編『音楽と法 (社)日本レコード協会寄付講座 1993年度』(青山学院大学法学部、1994年)
- 当サイトに対するご指摘・アドバイスありがとうございました。>賢治様
- 花井孝明
- 執筆担当。名古屋大学ギターマンドリンクラブ昭和51年卒部。名古屋大学ギターマンドリンクラブOB演奏会実行委員。マンドリンアンサンブル「ムーサ」・Ensemble ESCHUE所属。大学教官。
- 広瀬裕樹
- 法律関連チェック担当。名古屋大学ギターマンドリンクラブ平成7年卒部。名古屋大学ギターマンドリンクラブOB演奏会専門委員。Ensemble ESCHUE・ギターアンサンブル「井戸端会議」(活動休止中)所属。国立大学法学部大学院生。
- 粂内彰
- ホームページ管理担当。名古屋大学ギターマンドリンクラブ平成4年卒部。名古屋大学ギターマンドリンクラブOB演奏会実行委員。・ギターマンドリン合奏団 "meets"所属。上級システムエンジニア。